東京高等裁判所 平成11年(う)1605号 判決
論旨は,要するに,本件起訴状には,裁判官に予断を生じさせるおそれのある被告人の余罪ないし被告人の素行が記載されているから,違法な起訴状であり,公訴棄却されるべきである,というのである。
検討するに,本件起訴状の公訴事実の記載は,「被告人は,かねてA子に現金を与えるなどして,同児の乳房や陰部に触れるなどの行為を繰り返し,平成9年2月19日から,右行為をビデオカメラ等で撮影していたものであるが,同11年3月15日午後8時45分ころから同日午後9時41分ころまでの間,東京都北区≪以下省略≫の甲野荘B棟201号室の被告人方において,同児(当時15年)が18歳未満であることを知りながら,被告人との右行為の露見を恐れて困惑している同児に現金6万円を供与する約束をして,自己を相手に性交させ,もって,18歳に満たない児童に淫行させたものである。」というもの,罪名及び罰条は,「児童福祉法違反 同法第60条第1項,第34条第1項第6号」,というものであるところ,児童福祉法34条1項6号にいう児童に「淫行をさせる行為」とは,行為者が児童に対し事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をして,その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であり,その旨を訴因で明らかにすることが要求されるのであって,所論が余事として指摘する起訴状の「かねて」から「ものであるが,」の記載部分は,「被告人との右行為の露見を恐れて困惑している同児」との記載部分と相まって,本件訴因を明らかにするために必要な記載であり,公訴事実の存否について不当な予断を生じさせる余事記載とはいえない。右論旨は理由がない。